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District Report | District 通信

世界の街とヒトからお洒落を学ぶ

ディストリクトの2022年秋冬シーズンが本格的にスタートします。今シーズンのテーマは‘ジャーミン・ストリート/マディソン・アヴェニュー/キャット・ストリート’。そこに至った背景をクリノが語ります。

いつもディストリクトを気に掛けていただき、ありがとうございます。
ディストリクトでは創設以来ほぼ毎シーズン何らかのテーマを掲げ、仕入れやオリジナル企画、ディスプレイや店作りに生かしてきました。
映画や音楽、俳優やミュージシャンがヒントになったことは何度もありました。僕は海外の美術館や街角でアイデアを得ることも多かった気がします。

さて、2019年の冬に新型コロナウィルス(Covid-19)の感染者とその拡大が確認され、やがて全世界に広がって以降は飯島バイヤーも僕も出張に出られず、そういう意味では海外でのアイデアのキャッチアップがしにくくなっていた、とも言えます。
とはいえ,それをいいわけにしても仕方がないので、自分達やスタッフが本当に好きなモノやディストリクトのお客様との日頃のお付き合いから感じる‘コレが着たい’‘コレが好き’が仕入れや企画の基軸として再確認されました。
それは洋服屋として当たり前のことではあるのですが……。

一方、ブランド側もフィジカルなショウや展示会が実行できなくても、最新コレクションを提案し、理解して貰うための努力を続けていました。
たとえばドリス・ヴァン・ノッテンはアントワープの公園や街角でコレクションを撮影し、同じくウィメンズではバレエ・ダンサーにコレクション・ルックを着せてムーヴィー化して完成度の高い映像を作り上げていました。以前から映像に力を入れていたカラーやアンダーカバーも同様です。また、東京発のブランドである利点を生かしたコム デ ギャルソンは本社ビルの中でミニ・ショウを見せました。
そんな試行錯誤を拝見しつつ、自分達もさまざまな努力をした3年間でした。

Covid-19 自体は新たなステージに入った感がありますが、‘良い服を提案する’という我々のミッションは不変です。
人類的な危機と向き合い、近代社会の生んださまざまな問題を実感した今日の‘生活者’つまり我々のお客様に、今後も‘服’の価値や、それがもたらす‘ハピネス’に関し、いかにリアリティーを込めて提案/提供していくのか?
今までも真っ直ぐに取り組んできたと自負してはいますが、さらなる進化/深化が必須です。

そんな2022年の秋。僕達にとって常になんらかのインスピレーションとなってきた世界の都市に着想してみました。
‘ジャーミン・ストリート/マディソン・アヴェニュー/キャット・ストリート’ 少し長いのですが、これが今季のディストリクトのテーマです。

ロンドンの老舗洋服店が軒を連ねるジャーミン・ストリート、ニューヨークの商業エリアのなかでもトラッドと言われるお店やブランドが多いマディソン・アヴェニュー、そしてディストリクトが店を構える東京 原宿のキャット・ストリートがヒントです。
このなかでキャット・ストリートだけは‘通称’であり、90年代までは店舗など無く、多くのネコ達が行き交っていたことから‘キャット・ストリート’と呼ばれたというのが通説です。

ロンドンの紳士服街と言えば背広の語源とも言われる‘サヴィル・ロウ’が有名ですが、そちらはテーラーが主体で、オーダーメイド服の老舗が何軒も軒を連ねています。
一方のジャーミン・ストリートにはシャツやネクタイといった単品のお店と靴屋さんが並びます。しっかり肩パッドが入ったジャケットやスーツと発色の良いシルク・ネクタイが目に浮かびます。

マディソン・アヴェニューにはブルックスブラザーズやポール・スチュアートといったアメリカン・トラディショナルやブリティッシュ・アメリカンと言われる‘東部風’のブランドの旗艦店があり、ネイビー・ブレザーやツィード・ジャケットとチノパンツのイメージがあります。

そしてキャット・ストリート。それはイコール‘東京’なので、自由な着こなしやクリエイティヴなデザイン、そして凝った職人技が想起されます。コム デ ギャルソンやカラー、アンダーカバー、フミト・ガンリュウ、サイ、マンド、トーガetc……といった、日本が世界に誇るデザイナー・ブランド群です。

ディストリクトでは上記にカルーゾのクロージングやサルバトーレ・ピッコロのシャツ、ウィリアム・ロッキーのニット、スティーヴン・ウォルターズのネクタイ、デニス・コロンやベッグのカシミア・スカーフを提案し、イタリアのジャコメッティ、フランスのパラブーツ、イギリスのチーニー、アメリカのバス・ウィージャン等、完成度の高い靴で足元を固めます。
創設以来何度もメッセージしてきましたが、これがディストリクトやユナイテッドアローズの品揃えのコアとなる‘トラッド・マインド’な商品達。

僕達にはコム デ ギャルソン(CDG)もカラーもモノづくりの背景にトラッド・マインドが感じられ、メゾン・マルジェラもドリス・ヴァン・ノッテンも同様に捉えています。
品質が良く、完成度が高い。それらの服を自由に組み合わせて着る。
時にはマディソン・アヴェニューを歩く広告業界人の様に全身アメリカン・トラッドでビシッとキメる。ある時はブライアン・フェリーの様にブリティッシュ・スタイルのスーツにCDGのシャツを着てシロ・スニーカーで〆る。また翌日はCDGの縮絨仕様のジャケットにカラーのビッグパンツを履いて、足元はパラブーツ……。
日本の服装には’階級制‘の影響が無いので、自由に、楽しく着れば良いのです。

そんな‘自由な着こなし’を体現しているのがディストリクトのスタッフだと思います。手前味噌ですが、彼等の着こなしは、そのまま提案であり、僕には大きなヒントになっています。
店長ハマモトはデザイナー・ブランドをさりげなく着る上級者。モリヤマもまた‘何を着てもトラッド気分’に仕上げられる‘名人’。クズヌキはリラックス感を主体にしながらもヒネリが上手い。コバヤシは自然な笑顔そのままにシンプルなモノもデザイン性の濃い服も楽しく着る。ナガクラは年齢が若いのにクオリティーの高い服や靴への理解と愛が深く、同じく若手のイワシタはスタイルの良さを生かしてE.W.ベイカーのフレア・パンツをまるで幼少時からの愛用品の様に履きこなします。
3代目バイヤーとして活躍中のイイジマはカルーゾのジャケットにハンドルームのカーゴパンツが良く似合う30代。今夏、卒業したベテランのヨシワラには‘難易度の高い服でもショーツを履いてしまえば自分流’を学びました。また顧客の方からも多くのヒントをいただいています。体格の良いAさんはDVNのパンツを二本お買い上げになり、繋げてご自身のサイズに! お洒落ご夫婦のBさんは新品のCDGモーニングを洗ってしまう! スタッフも脱帽。

ご紹介させていただいたディストリクトのスタッフは、冒頭に説明した‘質の良い服を自由に着こなす’有段者だと思います。僕や飯島バイヤーが新しいデザイナー・ブランドを導入したり、チャレンジングな服やアクセサリーを買い付けられたりするのもこの店頭チームがいるからこそなのです。
そして彼等の提案する今秋のスタイリングこそ‘ジャーミン・ストリート/マディソン・アヴェニュー/キャット・ストリート’を具現化したもの……とご理解いただければ幸いです。

Covid-19が世界を揺るがしました。また戦争も起きています。地球温暖化も進行中。
でも、それらの問題を解決する主体者は我々です。自分自身の行動や発言、メッセージ発信、或いは選挙時の投票等が私達の世界を少しでも良い方向へと変えていく……。
そして、自分が自分自身でいるためにも‘着たい服を着たいように着る’ことがたいせつだと僕は信じます。

たくさんのモノを買うことや、流行りの格好をすることや、消費行為で世の中を忘れること……はまったく推奨しません。
しっかり選んでじっくり買う。そして自分らしく着る。
それはヒトの意思表示であり、行動力や決断力を磨くプロセスとなっているのではないでしょうか。そして‘世界を見つめ続ける’、僕はそうやって生きてきました。

楽しい季節をお迎えください。
2022年、猛暑の東京にて。栗野宏文