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おまたせしました 12/05到着です
2012.10.25|by クリノ
昨年の展示会が初めてワールドワイドにセールスしたものであったにも拘らず、数多くの優良店に認められた“12/05”。アリエナイ様なトラブルを乗り越え、いよいよ到着しました!ディレクター・クリノが語ります。
永年バイヤーとして、ディレクターとして、数多くのデザイナーやブランドに出会い、実にたくさんの商品を見せて貰っていますし、仕入れてもいます。そして、その中のかなりの商品は自分用にも購入しています。私物として好きな例と理由を挙げれば、色が好きなのが“ドリス・ヴァン・ノッテン”、デザインやシルエットが気に入っているのは“カラー”、パターン(型紙)や縫製が優れているのが“サイ”、洗練されているのが“マンド”、手作り感覚に共鳴するのが“ケーシー/ヴィダレンク”、男らしさに納得する“ジュンヤ・ワタナベ”、創造性に惹かれるのが“コム デ ギャルソン オム プリュス”…と、キリが無いですね!近年は“ライトモチーフ”や“クリストファー・レイバーン”、或いは“ベルグファベル”や“アンド・ウェアーズ”との素敵な出会いもありました。それぞれ本当に魅力的なブランドたちです。
さて、そうした公私共にお気に入りのブランドのひとつ、12/05との最初の出会いは昨年の1月でした。
パリ・メンズ・コレクション時のタイトな買い付けスケジュールの中に無理やり入れたアポイント、場所はエルメス本店近くのホテルの1室です。新進デザイナー達の多くは、こうしてホテルの1室を借り、展示会を催します。商品を見せてもらい、試着し、コンセプトを聞くうちに“これはディストリクトとして是非扱うべきブランドである!”と判断しました。理由は、デザイナーのパウラ・ジェルバーゼの真面目さ、センスの良さ、全てを自分の目の届くところで作る(Home Grown)という考え方、そして彼女の背景がサヴィル・ロウにある、という部分です。
パウラはセントラル・セントマーチン美術大学在学時にサヴィル・ロウの“キルガー”でヘッド・デザイナーとなりましたが、それ以前はカッターとして男性優位社会のサヴィル・ロウで修行し、着々と実力を認められていった素敵な女性です。その一途で職人的な価値観と、ブラジルで生まれ、アメリカ(NY)やスイス、そして英国で教育を受けた、という生粋のコスモポリタン的側面(7ヶ国語を話します)とが、12/05というブランドの美学やフィロソフィーに結実しています。
昨年の展示会が初めてワールドワイドにセールスしたものであったにも拘らず、数多くの優良店、特にメンズ・ファッションが進化し、セレクト・ショップという世界に誇る小売業態が成熟しつつあるこの日本で認められた、という点に、12/05の魅力や付加価値がある、と断言できるでしょう。昨年、秋・冬、各店に導入された12/05の商品は目の肥えた日本のお客様方に支持され、セールス的にも大成功を収めました。僕もショール・カラーのジャケットを購入し、お気に入りの1着となっています。
数字的な部分だけ言えば、昨年と今年(来期)とでは、なんと倍の数字となっているそうです。ところが、こうした新進ブランドが順調に成長し続けることは、始めの一歩を踏み出すよりもはるかに難しいのです。資金面だけ考えても、発注が倍になって、生産が倍になり、工場や生地屋さんへの支払いも倍になるのに、生産し、納品した卸し先から売り上げが回収されるのは、その後です。このタイミングのズレには皆苦労しています。その“時差問題”をクリアーしても、新進ブランドならではのトラブルの種には事欠きません。12/05の場合は“全てを自分達の目の届くロンドンで作る”という素晴しい姿勢が、こと2012年という年にあって“仇”となってしまいました。
彼らのファクトリーのあるロンドン東部は今年のロンドン・オリンピックの競技場のあったエリアです。厳しい交通規制に加えて、英国からの出荷航空便の量規制まで生じてしまい、折角生産した製品が動かせない…そんな問題が多発してしまいました。そんな状況下、更に究極のトラブルが発生。生産していた工場が倒産してしまったのです。幸い、工場に投入してあった生地は取り戻せたので、急遽、他の工場を探し、再び投入。デヴューから1年強、順調すぎる程の評判とは逆に、諸問題も起きてしまった1年でした。
しかし、しっかり者のパウラは言います“確かにアリエナイ様なトラブル続発だけど、これが、ブランドがもっと大きくなってからでなくて良かった。まだ、自分達で駆けずり回れば解決できたから…。考えてみたら、12/05を立ち上げたきっかけも、以前在籍していたブランドが洋服を理解しない投資家に買収され、自分の考えとは違う方向に行ってしまったから、そこで、思い切ったのが良かった。ワタシは何時も最悪の時に、それをひっくり返して生きてきたみたい”と。実に前向きな考え方、生き方だと思いました。 正直、今シーズンの納期はとても遅いです。もう待ちくたびれて、痺れを切らしてしまいそうかもしれません。でも、なんとか到着しました。そして、内容はとても良いです。まさに彼らが言うところの“モダーン・テイラーリング”の世界です。更に完成度をました型紙、柔らかく、軽い素材。そして品の良いデザイン。
冒頭に述べましたように、僕がプロとして買い付けているブランドの中でも、個人的な好みに非常に近く、共鳴できるブランドの一つが12/05です。僕は今季もジャケットやらコートやらアレやコレや購入します^^
たいへん待たせしました、今季もイチニーゼロゴーを宜しくお願い申し上げます。
栗野 宏文
※ 今回ご紹介しているアイテム以外にも、今後続々入荷予定です。詳しくは、ショップまでお問い合わせください。
本文のおわりです。