'Future Vintage (or born as Masterpiece)'
今シーズンも何着かの洋服を購入し、着ています。
そんな中のコム デ ギャルソン オム プリュス(CDGHP)の服について書きます。
今更言及するまでもなく、あまたあるデザイナーズ・ブランドの中で毎シーズン注目し、毎回何かを考えさせられ、時には鳥肌モノの感動を得る...それがコム デ ギャルソン オム プリュスやコム デ ギャルソン ウィメンズのコレクションです。
コレクション毎に、単にデザイン云々ばかりでなく、男性像や女性像そのものに対する変革をももたらす、それがコム デ ギャルソンという存在でしょう。
それはカルチュラルな'事件'と言っても良いかも知れません。
例えば2012年、秋・冬のコレクションで表現された'女子のような男子服(男性を超えた服)'は、そのデザインやディテールばかりでなく、メイキングやアイテム発想においても革命的でした。例えば肩やアームホールの作りにおいての従来の男子服を超越した発想と具現化は特筆すべきものでした。その延長線上にあると言える'マント'というアイテムがもたらした斬新性、結果として体感される解放感や新たな着用感は、単なる、いちアイテムとしての意味を超えています。そして時代そのものも'草食系男子'が花盛りとなり、ワールド・コレクションではロンドンを中心にジェンダー・フュージングが大きな潮流となってきました。
CDGやCDGHPの凄さは、そのシーズンで与える衝撃ばかりでなく、時間が経過して、より一層、ジワジワと体感される影響力の強さ、にもあると思います。
度々、原稿等で言及してきましたが'真に革新的なものは時代を超え'ます。
'振り切った創造物は時代を超越する'のです。パンクやビートルズ、ピカソやウォーホールは今や'古典:クラシック'です。
CDGHPの例で言えば、2013年の秋・冬において斬新であったり、驚きであったりするばかりでなく、時を経てから'アレってそういう意味だったんだ'とか'今こそアレが重要なんだ'と思うこともある、ということなのです。
優れた発明品と言っても良い'ファッション'の中でも、その革新性と、同時に保たれているリアリティーとの稀有な共存はCDGHPというブランドの最大の特徴でしょう。
'着られる革命''時差を含有した価値観/美意識'の産物...それがCDGHP。
わかりやすく言えば'そのシーズン買い逃したことが悔やまれるコレクション'です。
逆に、そのシーズンに購入したものが、翌年以降、一旦、着用率が下がったり、着なくなったりしても、'時差'の結果'また着られる''また着たくなる'或いは'後からこそ着たくなる'...そういう存在とも言えます。
ここでご紹介しているCDGHPはそんなアイテムの一部です。

グレイのタートルネックは15年以上前に購入したもの。タートル部分を折り返さずに着ることや、そのまま立てて着ることも可能(というか、勝手にそうしています)で、身頃の編地が斜行(斜めになっている)していることも特徴です。タイトフィットな着用感ではないため、しばらく着なかったのですが、昨年あたりから復活し、今年の冬は完全に現役復帰しそうです。このニットは1998年1月の厳冬のパリとアントワープで着ていました。エディ・スリマンによるイヴ・サンローラン・リヴ・ゴーシュ・オムを初めてUAに仕入れた出張で着ていたことを今でも覚えています。15年モノ、ですね。

続くグレイのピーコートというかダブルのショートコートはCDGHPとディストリクトのWネームです。ディストリクトを立ち上げて最初の数年間、毎シーズン何かをお願いしていた別注シリーズの中の1着で、同じシーズン、ダッフル・コートも作っていただきましたが、どちらも未だに着用しています。こちらは約11年モノ。
そしてベージュ系のチェックのジャケット(ロング・ジャケット?)これは今季モノです。ランウェイ時から気になっていましたが、実は黒地ストライプの、やはりロング丈のセット・アップ(ハマモト氏とお揃い、ですね!)を既に購入していたので'1シーズンに長い丈のジャケットを2種類も要らないだろう...'と考えて、購入を控えていました。

しかしクズヌキ氏のブログで紹介されているのを見てお店に向かったのでした。僕はディストリクト・ブログ(DB)がきっかけでお買い物に至るケースが結構あります。'自分自身も書いているし、身内だろうに'と受け止められる方もいらっしゃるかと思います。当然です。ところがDBの面白いところは社内や身内のスタッフもヴィヴィッドに反応することなのです。
このジャケットは柄や素材感やディテールはトラッド感満載な一方、着丈が長く、アウター感覚で着られる。新しいのにあわせやすく、派手でないのに斬新で、ありそうで、無い、有難い、アイテムです。
このチェックのジャケットはロング・ジャケットとも言え、ジャケット型のアウターとも言えますが、大袈裟に言えば2013、秋・冬はメンズのジャケットの着丈、ひいてはシルエットが変化した(変化し始めた)シーズンになる予感がしています。
CDGHP以外でもジュリアン・デヴィッド(優秀な新人ですね)が素敵なロング・ジャケットを発表していました。僕は手持ちの古い服(自称クリノ・アーカイヴ)から、ケーシー/ヴィダレンク(ケーシー/ケーシーになるずっと以前)の着丈の長いジャケットを引っ張り出してきて'そろそろキミもまた出番だよ'と囁いたりしています。
このCDGHPのチェックのジャケットとも長いお付き合いになるのでしょう。
中身は60年モノ、ですけどね...
2013年、晩秋。クリノ・ヒロフミ