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カラー アベジュンイチのモテ期

2020年春夏シーズンのkolorのアイテムが入荷しました。昨今の人気の高さを“モテキ”と呼ぶクリノが、デザイナー阿部潤一さんとのお付き合いを振り返ります。

最初に僕が阿部潤一さんの仕事の一端に触れたのは1992年4月20日、両国駅臨時改札口でした。

?と思われるかたも多いと思います。28年前なのでまだppcmも、もちろんkolorも誕生前です。1992年の4月はジュンヤ・ワタナベのデビュー・コレクション。阿部さんはジュンヤのチームに居て、コレクションで使用するツイードやデニムの調達のためにロンドンで大量の古着を集める担当だったそうです。
ジュンヤのコレクションはそれらツイードやデニムの古着をほどいて素材とし、パッチワークして縫い上げるという凝った作りでした。ロケーションとなった両国駅には相撲開催時以外は使われない改札口があり、その階段やパブリックスペースを巧みに使用したこと、また音楽がほとんどガーシュウィンの名作『サマータイム』のヴァリエーションであったこと等々含め、オリジナリティが高く、鮮烈なデビューでした。幸運なことに僕はその場に居合わせたのです。そのコレクション製作裏話を知ったのはユナイテッドアローズがppcmと取引して僕が担当となり、阿部さんと色々お話しする機会を得た1995年以降でした。

阿部さんがジュンヤ(コム デ ギャルソン社)から独立して立ち上げた最初のブランドppcmとのおつきあいは、初回の展示会を見た重松理(当時はUA社長、現在は名誉会長)に「次からは栗野君担当してよ」と言われ、引き継いでからです。ppcm時代の10年間をバイヤーとしてお付き合していたある日「お話があります」と阿部さんに言われてお聞きしたのがppcmの解散! 青天の霹靂でした。ブランドの売り上げは順調でしたし、チーム内の関係も良好に見えました。ppcmとは阿部さん、森田さん、渡辺さん(ともう一人)の文化服装学院同級生でスタートしたブランドで1994年に設立し2004年に解散。この10年間でチームとしてやるべきことは一通りやり切ったから……というのが理由でした。
たしかにppcmは日本国内の殆どの有力店で扱われるようになり海外進出も果たし、パリの集合展示会にも出展していました。その当時の忘れられないエピソードはppcmの3人とUAチームとでパリでディナーをした際にレストラン近くのパレ・ロワイヤルの路地でナイフを持った少年2人に追いかけられたことです。僕らは全速力で走って逃げましたが、その場に居合わせた吉原君(現ディストリクト、当時はUAのプレス担当)が「Aldenは走れる靴ですね!」と感嘆したこと。実際そうなのですが、ここが洋服好きのオカシイところ。命の危険より靴の履き心地や性能に意識が行く……。

・Tシャツ(kolor):¥15,000 +tax
・スウェット(kolor):¥26,000 +tax

・ジャケット(kolor):¥85,000 +tax
・パンツ(kolor):¥34,000 +tax

・パンツ(kolor):¥36,000 +tax

・ショーツ(kolor):¥46,000 +tax
・パンツ(kolor):¥49,000 +tax
・シャツ(kolor):¥33,000 +tax

2005年に阿部潤一さんは単独でブランドkolorを立ち上げますが、最初の展示会は都内のホテルの1室でした。実はホテルの部屋を借りた展示会というのはインディペンデントなブランドではよくある話です。後にパリ進出を果たして以降もパリのホテルがkolorの展示会場だったことが何度もありました。
そして2012年にパリのファッション・ウィークでインターナショナル・メジャー・デビューを果たします。会場は北マレのエスパス・コミン。余談ですが僕はこの会場を“出世会場”と呼んでいます。1998年 エディ・スリマン最初のサン・ローランも、2005年のクリス・ヴァン・アッシュのデビューもここで見ました。彼等以外にも絶頂期のヘルムート・ラング等、ここでのコレクションは印象に残る内容が多いのです。その後kolorはフランスのラジオ局のビルや現代美術館パレ・ド・トウキョウを会場に毎回素晴らしいショウを見せてくれました。
ピッティ・ウオモの招待デザイナーとなった2013年のショウは野外の会場を使い、夏のフィレンツェならではの爽やかさに満ちた素敵なひとときを創出。ハワイアン・プリントやアロハ・シャツをファッション・ブランドで使用した好例ではないでしょうか……。

そして阿部さんはまたもや驚くような決断と発表をしました。「パリでのランウェイ・ショウを止め、展示会のみにする」と。ビジネスも順調で評判も良かったのに……。理由は「ランウェイでジャーナリストに評価される作品と自分が作りたいものや実際にkolorを買い、着て下さるお客様との乖離が気になるから」と。この決断に関しては「もったいない」というコメントも多かったのですが、一方、永年 阿部さんを知る者としては“理由”の正しさ・正直さ、に感動しました。上記のいきさつについては以前も書いた気がします。

そして現在。僕は阿部潤一の“モテキ”と呼んでいますが、パリのランウェイから離れてからさらに良く売れるのです。その勢いはシーズン毎に強まっています。しかも価格が高価でデザインが強い、いわゆる“攻めている”アイテムに人気が高まっています。パターンに精通し、独特の色彩感覚を持ち、それらをユーモアとインテリジェンスで誰とも似ていないオリジナルな服に仕上げる。人気の理由は阿部さんの実力以外のなにものでもない、と言えます。阿部さんの卓越したユーモアはキャリア・スタート当初からのキャラクターですが、ランウェイを休止して以降注力している“ルックブック・ムーヴィー”がまた笑えます。東京の各所で撮影されたフィルムはそのロケーションの意外性やハズシによって“クセになる面白さ”を持っています。従来の“ファッショナブルな感覚”や“トレンディーなセンス”といったもの(それらは手垢のついたイメージ/手法とも言えます)から距離を置いてつくりあげた“kolor的世界”がそこにあります。

・ショートスリーブシャツ(kolor):¥41,000 +tax
・シャツ(kolor):¥33,000 +tax

・コート(kolor):¥84,000 +tax
・ショーツ(kolor):¥39,000 +tax

・ブルゾン(kolor):¥86,000 +tax

思い起こせばppcm時代にもランウェイ表現は行わず、面白いフィルムを撮っていました。お蕎麦屋さんに集まった連中がもくもくとお蕎麦を食べている、ただそれだけの映像です。着ている服がppcmである、という以外はなんの“押し”もない世界。
アベジュンイチはハズシの天才とも言えるでしょう。僕は毎シーズン、kolorやkolor/Beaconの服を買い、永年着続けますが、そのシーズンで目立っていたアイテムや話題になるモノ以外にも「こんなのありました?」という発見があるのもkolorの旨味。深い滋味があります。

2020年の春・夏シーズンがスタートし、毎シーズン デリバリーの良いkolorは早速、快調に売れています。奇をてらっていないのに全く他の誰とも似ていないオリジナルなデザインと独特の色彩、そしてハズシているかに見えて着ると格好のよいパターン&シルエット……。
みなさんもぜひ店頭で隅から隅まで2020年、春・夏のkolorを堪能して“発見”してください。

Firenzeにて。クリノ・ヒロフミ。