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District UNITED ARROWS

District Report | District 通信

JOSEPH CHEANEY & SONS
’18春夏

Districtでも人気の高いCHEANEYのシューズ。質実剛健で朴訥としたたたずまいがハートを掴みました。今回は新たに入荷する2モデルの紹介と、そのブランドの歴史を紐解きます。

Districtのテーマでもあるクリエイティビティ&クラフツマンシップ。ことシューズに関しては職人仕事(クラフツマンシップ)のわざを体感できるアイテムとして大切にしている部分です。なかでも長い伝統と真面目な靴作り、そして華美さはなくとも紳士のエレガントを体現する英国靴はその頑丈さもあって常に憧れの対象です。

数年前からフォーカスしているCHEANEYも英国創業1886年の老舗で英国を代表するシューズブランド。1960年代後半からはChurch's傘下で主にOEMなどを製作するファクトリーブランドとして当初日本では認知されていました。創業当初のユナイテッドアローズのオリジナルシューズをお願いしていたこともあり、個人的にも親しみのあるブランドだったのですが、2000年代に入りChurch'sがプラダグループに買収されたタイミングで、傘下ブランドのCHEANEYも一緒に権利が移行します。靴作りに対する情熱を捨てきれなかったチャーチ家五代目のウィリアムとジョナサン・チャーチ氏が2009年にCHEANEYを買い戻しリブランディングをしたことで、脈々と続く伝統的な職人技、数々の下請けをこなしてきたことによるデザインのフレキシブルさが合わさった新生CHEANEYが誕生します。

靴作りを家業とし、そのクオリティに対する信頼で英国を代表する靴ブランドに育てたチャーチ家の人々(“チャーチ家の”という意味で“Church's”)が、企業買収の影でそのクラフツマンシップを捨てずに再度ブランドを育て始めるなんて、池井戸潤氏の小説のようなロマンを感じませんか?


Districtでお取り扱いを始めたのは、英国軍に供給していた歴史もあるミリタリーラストを用いた無骨なCAIRNGORM II R(ケンゴンII R)が最初でした。ほかのブランドでは今では見られなくなったその質実剛健なつくりと、朴訥としたダサい(いい意味で)たたずまいはバイヤーもスタッフもお客様も一目惚れ。一気にファンを獲得しました。個人的にヴィンテージのサイトで調べたこともありますが、このモデル自体は非常に長い歴史があり、英国軍に納入していたシューズブランドもTECHNICやLOTUS、GEORGE WEBB、JOHN SPENCERにTricker's、はたまたEdward Greenなど数々のファクトリーが名を連ねていて、CHEANEYもまた1940年代から納入をしていたとのこと。

特徴的なのがアッパーの革がウェルトにのって一緒にステッチダウンされたVELDTSCHOEN CONSTRUCTION(ヴェルトショーン製法)と呼ばれる作り。いまではCHEANEY社とCrocket & Jones社にしかその熟練の職人さんはいないという希少なディテールも、マニア心をくすぐります。その後もCAIRNGORM II Rに続き、英国靴らしいフォルムを持つクラシックな125ラストのストレートチップやブリティッシュカントリーには、ヒールカップとボリュームのあるトゥシェイプをもつ12508ラスト、よりアメリカンでカジュアルなフォルムの175ラストなどなど、それぞれのフォルムの個性を活かしたバリエーションの拡大でDistrictでもシーズンを追うごとに売り場のシェアを広げてきました。

レザーのクオリティもここ数年で格段に上がりました。品質管理マネージャーには元Edward G……に勤めていたスタッフが移籍してきました。アッパーに使用するレザーのタンナーには、惜しまれながら廃業してしまった独カール・フロイデンベルグの職人たちが伝統と技術を継承するために新たに立ち上げたウィンハイマー社のカーフ。使い込むことで馴染んでくる柔らかさと落ち着いた光沢感が魅力です。

Districtでもいわゆるドレスシューズにカテゴライズされるようなベーシックなラインナップよりも、チノやデニム、時にはカジュアルなセットアップの足元に馴染むような個性豊かなモデルをチョイス・紹介してきたつもりです。クオリティは高いまま、単純な王道クラシックの英国靴におさまらないデザインとラストの柔軟さこそ、CHEANEYの魅力なのです。

・「STOUR C」:¥64,800

2018年春夏のラインナップはCAIRNGORM II Rに見られた特徴的なベルトショーン製法をもちいたSTOUR C(ストアC)が登場します。コマンドソールの全天候性とウィング飾りのついた外羽根などは、CAIRNGORM II Rのストレートチップを模したフロントのステッチがなくなったような顔。そしてわたしにようにたくあん大好物の人にはたまらないアーモンド・グレインレザーのアッパーが最大の特徴。ファッジ・ウェルトというラバーとレザーを交互に積んだ立体的なソールも、クラシックなカントリー靴を思わせる一足です。

実はこのSTOUR C、CAIRNGORM II RがDistrictでヒットしたときからカラーバリエーションのように展開したいと、わたしがリクエストして2年越しで展開実現したモデルなんです。ラストこそ違いますが同じベルトショーン製法だし、全天候着用可能の頑丈さと便利さに惚れてCAIRNGORM II Rを2色買いしていただいたお客様も、次の一足に選んでもらえるだろうと。なにより”たくあん色”の靴はわたし含め目がない紳士が多いので、今回の入荷アイテムのなかでも大プッシュの一足です。

・「WILFRED」:¥63,720(後日入荷予定)
 ※ こちらの画像はサンプルで撮影をしており、実際の商品は一部仕様やカラーが異なる場合がございます

もう一足の入荷予定は、古巣C社の#73ラストに近いフォルムをもつ125ラストのセミブローグのWilfred(ウィルフレッド)。C社の代表的なモデルでもあるディプロマットを彷彿とさせるウエストのシェイプも美しい真面目な一足ですが、ここにDistrictならではの遊び心を加えてもらえました。革の裁断をおこなうとなめしと染色が行われた表皮に対して革の断面はナチュラルな革本来の色がみえます。本来靴だけでなく鞄などの製品にする場合、この断面にはコバインキと呼ばれる着色の工程を経て縫製されます。ウィングチップやストレートチップ、外羽根のパーツなど一枚革ではないデザインにはほとんどの製品がこの加工を施されているのですが、今回のWilfredは革の断面にあえてコバインキの工程を省いて製品にしていただくよう依頼しました。
どういうことが起こるかというと、デニムのカットオフのようにというと言いすぎですが、ドレッシーなセミブローグのパーツの断面にナチュラルの革の色目がみえるという……。安価で手軽に楽しむようなデザインシューズなら珍しくもない仕様かもしれませんが、非常に美しい靴作りをしながら発想の柔らかさもあわせ持つCHEANEYだからこそ可能になった、なんともパンクな別注です。(近々入荷しますのであらためてブログ等でご紹介します)

Districtでお取り扱いしているブランドの多くがそうですが、購入したタイミングが100%で着用使用するほど劣化していくのではなく、着込んだり履きこんだりするほど魅力が増していく……。英国靴を代表するファクトリー(工場は歴史的建造物として地元政府から保護指定されてもいます)でもあるCHEANEYもまたそんなブランドです。


モリヤマ