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クリノがTÉGÊにかける思い

お客様がファッション商品に感じる価値とは何か? 生活者の価値観の変化に企業が求められるものとは? その一つのレスポンスでもあるTÉGÊプロジェクトにかける思いをクリノが語ります。

今年でファッション業界歴40年となります。長い様でもあり、あっという間でもあった気がしています。この間にファッションの意味や企業の役割、また、生活者がそれを受け止めるニュアンスも大きく変化してきました。直近で言えばソーシャル・メディアの発達によってあらゆる情報の発信手法や主体者が変化し、それが大きく影響を与えている…
これはファッションに限らず世の中全体に言えることでしょう。

この40年間で世界のファッション地図も塗り替わってきました。所謂ハイ・ファッションの中心地は発表の場という意味ではパリです。しかし40年前、我々が海外出張で見聞きして衝撃を受けたり、学びの元となったりしたものは大分変質してきた様に思えます。


パリやロンドンやミラノやフィレンツェで観たショップの数々。重厚な町並みの中に構えられたモダンな或いはクラシックな内外装…。洒落たディスプレイ、そして格好良く親切な販売スタッフは我々のお手本でした。いつかああいう素敵なお店を作り、ああいうイカした販売スタッフになってお客様に接客したい…そんな思いが僕や日本のファッション業界人の原動力となって日本のファッションが育ってきたのでは無いでしょうか?そして今や日本のショップは世界のファッション小売業の先端を行っていると言われています。内装、品揃え、そして販売姿勢。僕が海外出張に行く理由の一つが小売業(同業者)のリサーチなのですが、いわば定点観測とも言える‘ショップ訪問’も、訪れる先が徐々に変化してきました。以前にも書きましたが、かつて沢山あった個人経営のユニークなショップがどんどん消えつつあります。そして並んでいるブランドも何時の間にか同質化し、無名でも面白いブランドを品揃えていたお店が何時の間にかビッグ・ブランドの集積になっていたりします。また、手前味噌になってしまいますが、日本のファッション小売業の接客姿勢やお客様のことを真剣に考える態度はおそらく世界一です。今やロンドンやミラノのショップ・スタッフは私語ばかりでお客様の方を向いていない人が多く残念です。一方、日本では販売の質を向上させる為の勉強会やロール・プレイング・コンテストが盛んで、それは一企業が何かのノウハウを独占するのではなく、同業者が等しく質を高めあう為の所謂‘ナレッジ・シェアリング(経験値の共有)’の場ともなっています。勿論、そのロール・プレイングも常態化してしまったり、マンネリ化してしまったりすることが批判されてもいます。

しかし‘自分達が良いと思う商品を自信を持ってお客様にお薦めする’という基本的な販売姿勢を保ち、進化/深化させていくことこそが業界全体の存続や成長の根本であることに間違いは無いでしょう。残念ながら今の欧米、特にアメリカの小売業にはこの考え方が希薄な様で、現状ファッション小売業の低迷は‘ネット販売の発達によってお客様が来店されないことに原因がある’という様な‘他責’論が多く聞かれています。


さて前置きが長くなりましたが、今回僕が書かせて頂きたいのは‘お客様がファッション商品に感じる価値とは何か?’という問題です。

先日‘Slowing Down Fast Fashion’という映画の上映会が有り、それに関連してパタゴニア・ジャパン社の辻井隆行さん(代表取締役)を交えたパネル・ディスカッションに参加しました。この映画はアレックス・ジェイム(Blurベーシスト)が今のファッション業界について警告を発した映画です。
ご存知の様にパタゴニアは業界で一早くペットボトルをリサイクルしたポリエステル・フリースを具現化し、自分達に出来る環境問題解決に積極的に取り組み、また自分達が販売した商品のリペアにも熱心です。辻井さんと話していて学びが多く、また共感すること大でした。そこであらためて思ったのは‘お客様は何を企業(ブランド)に求めていらっしゃるのか?’‘お客様は何を基準に商品をお買いになるのか?’etc…です。

90年代から2000年代初頭までの‘ファッション・ブランドの価値’は有名性、流行性、或いは有名人が持っている…云々でした(今でもそれは残っていますが)。しかし前述したソーシャル・メディアの発達と氾濫は過剰な情報露出による受け手の疲労と‘実は多くが仕込みである’ことへの反発や落胆、不信感を招いてしまいました。ヒット数の多いブログで某商品を紹介したり語ったりしている主体者が少なからずスポンサーからの金品の提供を受けている、或いはヒット数に対応した‘見返り’で成り立っている…こともまたソーシャル・メディアの中でリークされています。では生活者は一体何を信じ、何を基準にお買い物をしたら良いのでしょう?少なくともパタゴニア社が行っている‘社会意識に根差した企業活動’や‘生活者の真情に寄り添った商品開発’はその一つの答えであると思いました。


ユナイテッドアローズは2013年から国連世界貿易センター(ITC)の活動の一つであるエシカル・ファッション・イニシアティヴ(EFI)の日本のパートナーとなり、私達はTÉGÊ(西アフリカのバンバラ語で‘手’の意味)というプロジェクト&ブランドをスタートさせました。それはEFIのテーマである‘Not Charity just Work:慈善事業ではなく仕事である’に共鳴したからです。EFIはアフリカやパレチナ、ハイチ、カンボジアetc…の貧困地域でのものづくりを通じて地元に雇用をもたらし、それぞれの地域に伝わるハンドクラフトの伝統/技術を継承し、生産者の自立と貧困からの脱出を目指す活動です。ユナイテッドアローズを創業したときからクリノや鴨志田はアフリカのカルチャーやクラフトに惹かれてきました。そして様々なかたちでその製品化も試みてきましたが、このEFIとの出会いは我々にとって一種理想的なものでした。アフリカで直接ものづくりが出来、しかも地元に貢献できる。大きな話で言えばアフリカの貧困地域に継続的な雇用をもたらし、それが‘単に安価な労働力を求めた新奴隷制の様な意味合いでは無い’システムの構築に繋がる。また急速な近代化や資本主義競争原理の拡大による貧富の差の拡大を多少なりとも食い止めることで暴力的過激派のリクルーティングを少しでも阻止できたら…これが理想であり目標です。

そして‘他では手に入らない素敵なプロダクツ’をお客様に提供できること…これは何よりも嬉しいこと。結局、ケニアではマサイ族のオバサン達(日常着が凄くお洒落なのです)にビーズ・アクセサリーをつくって貰い、ブルキナファソの織手達に100%手織りのコットン生地を織って貰いそれをジャケット、セット・アップ、カヴァー・オール等に仕立ててきました。ブルキナファソの生地を織るに際して1%の電力も使用されていません。アフリカ版のハリス・ツィード的存在となること、それもブルキナコットンのテーマです。このプロジェクトのお蔭でケニア、ブルキナファソ、エチオピアに旅し、素晴らしい大自然や野生動物、そして素敵な人々に出会うことが出来ました。

このTÉGÊブランドのシリーズは僕にもとてもスペシャルなものとなっており、毎シーズン何か買い求めています。自分達でデザインしているので当然なのですが‘今はこれが着たい’というアイテムを具現化しています。今夏からはカヴァー・オール型が登場し、秋冬も継続中です。カルチャーが薫る服、底光りする魅力のある服、を目指しています。

・ショップコート:¥60,480(税込み)

・CPOジャケット:¥51,840(税込み)

・カヴァー・オール:¥51,840(税込み)

・ジャケット:¥51,840(税込み)

・ジャケット:¥56,160(税込み)
・パンツ:¥25,920(税込み)

・カヴァー・オール:¥86,400(税込み)

・ジャケット:¥97,200(税込み)
・ヴェスト:¥39,960(税込み)

・ヴェスト:¥39,960(税込み)

・カヴァー・オール:¥86,400(税込み)

今シーズンの特徴は
①リピート・アイテムが登場したこと。クリノや豊永譲司が愛用しているネイビー・コットンのセット・アップの改良型が登場しました。
②サイズ展開をXSからスタートしてジェンダー・フリーとしたこと。
③ラボ・コート(ショップ・コート)型を登場させたこと。
④原宿本店(unitedarrowsone)主導の企画でヤク素材のジャケット、カヴァー・オール、ヴェストを登場させたこと。これはTÉGÊ初の獣毛素材アイテムとなります。ヤクはチベット産の原毛をウール糸では世界随一のビエラ地方で整理し生地に織り上げたものを輸入しユナイテッドアローズが何時もお願いしているファクトリーで製品化しました。現在他国の政府支配下にあるチベットに伝わるヤクの酪農には2000年の伝統があるそうですが、近代化や政府の方向性に従ってしまうと、手間がかかるヤクの酪農よりも近代産業の導入による‘労働者化’が進んでしまうことが懸念されます。それは家族の崩壊やコミュニティーや伝統の消失、そして貧富の差が拡大してしまう可能性もあります。

今回ヤクの生地を買い付けているパートナーはmYakというプロジェクトですがチームには獣医が居てチベット現地でヤクの健康状態をチェックし、収穫量の加減も管理しています。TÉGÊはブルキナファソの綿も通年素材と捉えていますが、そこに本格的に防寒素材も加わったのです。ヤク素材はカシミアに等しく軽くて暖かいのが特徴です。クリノも先ずはヤク素材のカヴァーオールを購入しました。

さて、長い文章となってしまいましたが、クリノが40年のファッション小売業界で体感してきた変化、特に価値観や生活者の判断基準に対して現在感じている大きな動きは否応なく今後のファッション界を左右するものでしょう。その‘変化’に対し、僕達が28年前に創業したこの会社ユナイテッドアローズは対応し生残っていけるのか?私達自身のサステイナビリティーは私達の今後の活動やメッセージとそれに対してお客様方がどの様に感じ、判断して下さるのか、にかかっています。
僕やユナイテッドアローズの仲間達は、真剣にそこに向き合います。

2017年、秋。クリノ・ヒロフミ