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ベルグファベル 愛される服

ベルグファベルの服に使われる素材やディテール、デザイン・ソースはオーストリアとイタリアにまたがる山岳地方である南チロル地方由来のもの。その魅力を一言で言えば'マスプロダクトの匂いがしない'ということでは無いでしょうか?'叫んでいない'けれど'語りかけてくる'ベルグファベルの服たちをクリノが語ります。

今シーズンもベルグファベル(Bergfabel)の洋服たちがやってきました。この未知のブランドとパリの展示会で出会い、買い付けを決定し、ディストリクトで展開してから数年が経ちます。そしていつの間にかディストリクトのお客様方にもスタッフたちにもクリノにも欠くことのできない'愛すべき'存在となりました。

ご存知の様にベルグファベルは南チロル出身のクラウス・プンクトがデザイン・生産管理・デリバリーetc...すべてをひとりでこなしているとても小さなブランドです。

Bergfabelとは'山の物語'という意味であると教えてくれたのもクラウスさん。現在はイタリアに暮すクラウスさんですが、このブランドにはクラウスさんの故郷への愛が詰まっています。オーストリアとイタリアにまたがる山岳地方である南チロル地方は上記それぞれの国の良さを持っている気もします。南チロルが気になって調べてみると、その文化の深さや多様性、或いは歴史の中の悲劇や政治的複雑性も浮かび上がってきて、とても一言では説明しきれない程でした。言語的にもドイツ語(オーストリア語)、イタリア語、ラディン語と3種の言語が存在します。

ベルグファベルの服に使われる素材やディテール、或いはデザイン・ソースとなっているのも南チロル由来のもの。樵や羊飼いや農民の作業衣、或いは日曜日に教会に行くときや村祭りのときの晴れ着...。ファッション好きなら必ず一度は目を通すアウグスト・ザンダーの写真集『Menschen des 20. Jahrhunderts(20世紀の人々)』の世界を想起させます。クラウスさんは今でもフォークロリックなモノや暮らしが残る南チロル出身なので当然なことなのでしょう。ベルグファベルの服に感じる優しさやのどかさの向こうに山の景色が見え、花や木々の香りがイメージされますが、実際にベルグファベルの全ての服には生地でつくられた小さな袋がついており、中にはラヴェンダーが入っています。

本当にラヴェンダーの香りがする、という訳です。

16年前の夏、僕はスペインの小さな島'メノルカ'に旅しました。1993年にアントワープで知り合った写真家、カレル・フォンテーンを訪ねる為です。彼が島の一軒家を買い、全て自分でリノヴェーションした6室のプライヴェート・ホテルに滞在したのですが、ホテルの裏庭には野生のラヴェンダーが群生していて何時もとても良い香りが漂っていました。そして約1週間の滞在を終え、東京に帰ってトランクを開けて驚きました。トランクには'あのラヴェンダーの香り'が閉じ込められていたのです。花や種子を持ち帰った訳でも無いのに...'メノルカの空気'がそのまま運ばれたということだったのです。自然の素晴らしさや生命力に感動した想い出でした。

このエピソードは余談ですが、ようするに自然なものはそれだけ'ちから'を持っているということなのです。

さてベルグファベルですが、その魅力を一言で言えば'マスプロダクトの匂いがしない'ということでは無いでしょうか?別に手縫いの服という訳ではありません。それでも'服たち'が放つナチュラル感はディストリクトのお客様を魅了するようで、けして安価では無いのに毎シーズン殆ど完売します。ベルグファベルの服たちは'叫んでいない'けれど'語りかけてくる'のかも知れません。今シーズン、豊永バイヤーと一緒に選んだのはシャツ、シャツ・ジャケット、ウェストコート、ジャケット、コート、パンツ等で色目はグレイを意識しました。お客様の要望が特に強いものをスタッフからヒアリングしつつ、そこにクラウスさんが今季提案したいニュアンスを組み込み、更に、なるべくシーズンをまたいで着用できるような素材選びを意識しました。秋・冬コレクションなので防寒性や暖かさは当然ですが、着用して重さを感じない様に...という点も意識しています。

・シャツ:¥46,440(税込み)

・シャツ:¥46,440(税込み)

・シャツジャケット:¥82,080(税込み)

・シャツジャケット:¥77,760(税込み)

・ウェストコート:¥79,920(税込み)

・ジャケット:¥139,320(税込み)

・ジャケット:¥139,320(税込み)

・ロングジャケット:¥142,560(税込み)

・コート:¥160,920(税込み)

・パンツ:¥90,720(税込み)

ファンの方はご存知ですがベルグファベルの服の特徴のひとつに'袖がツレている'ことがあります。これは表地と裏地にそれぞれ縮率の異なる素材を使用し、洗いをかけたことで起きる意図的な'ズレ'です。

ファッションの面白さとは、この様に本来は'アウト'だったり'間違い'だったりすることも'アリ'になる時が来るということではないでしょうか?

それこそ80年代にコム デ ギャルソンが意図的に穴の開いたニットを発表した際も賛辞ばかりでなく批判や非難も多々ありました。ダメージ加工のデニム製品も'わざとボロくする'という、本来は考えられなかった手法です。裾のホツレや、裏地を出したり見せてしまったりする手法、或いは'コートの上にショート・ブルゾン'の様な着方/スタイリングでの'崩し'も今や市民権を得ています。

最後に笑い話のような注意点です。上記の様な'ツレ''洗い皺''ほころび'は事情をご存知ない方にとっては'コレハタイヘンダ!'となります。実際おばあちゃんが'あんたの服破れとるよ'と直してくれてしまうとか、お母さんが'シワシワでかわいそうだからしっかりアイロンかけておいたからね'という"悲喜劇"の例があります(どちらもコム デ ギャルソンの例デス)。

そんなことにもご注意頂きながら長く愛して頂きたい服、それがベルグファベルなのです。


2017年、9月。
クリノ・ヒロフミ