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アントワープへようこそ!
2009.05.08|by クリノ
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初台の東京オペラシティーにあるギャラリーで開催されている、‘6+ アントワープ・ファッション展’。Districtでも、多くのアントワープ・ファッションを扱っています。今回は、‘より大きな世界’への入り口だったというクリノが、アントワープについて語ります。
アントワープという町(街ではなく)を初めて訪れたのは、今から16年前の1993年のこと。 その頃町では、アントワープ・アカデミーのファッション学部、創立30周年記念のイヴェントが開催されており、会期終了間際の9月に滑り込んだ僕は、予想以上の寒さに震えたことを覚えています。初めてのアントワープを案内してくれたのは、当時のアカデミー・ファッション学部長で、今はフィレンツェのポリモーダという、同じくモードを学ぶ学校でディレクターを担当しているリンダ・ロッパ女史でした。彼女は今でいうところのセレクト・ショップを80年代のアントワープで手がけており、“ロメオ・ジリ”や“ジャンポール・ゴルティエ”といった、当時最も勢いのあったデザイナーの商品を扱っていたそうです。
ショップをクローズした後のリンダさんは、アカデミーで教鞭を執りつつも、“ドリス・ヴァン・ノッテン”の営業チームをサポートしたり、それ以外にも常に誰かを助ける活動に関わっていました。まさに八面六臂の活躍、というやつですね。リンダさんは、基本的にはフラマン語(ベルギー流のオランダ語)を話し、それ以外にはフランス語、イタリア語が堪能で、僕との会話は英語、おそらくドイツ語も話せたと思います。彼女以前に僕が知っていたマルチ・リンガル・パーソンは、イタリアのエージェントで知り合ったヴァン・ダイクさんというダッチ・ポリネシアンの女性で、やはり同時に5ヶ国語を操る人物でしたが、世の中にそんなに多言語な人がいるということは、当時の僕にとっては驚きでした。
リンダさんをきっかけに、アントワープという町を、そしてあの町のファッション業界人たちを知ることとなり、それは学生やその周辺の人脈へと繋がっていきました。 アントワープとの出会いは、僕にとって‘より大きな世界’への入り口だった、といえます。
アカデミーの記念イヴェントを1つ1つ丁寧に案内してくれたリンダさんは、それに対して感動しっぱなしの僕に興味を持ってくださったようで、この93年の訪問が後のアカデミー卒業審査員への招待(1996年~2002年)へと繋がっていきました。初めて訪れた町の、重要なイヴェントを案内してくれたのが最適な人物だった! それは初体験の柴又を車寅次郎に案内してもらうようなもの、リヴァプールをポール・マッカートニーに案内してもらうような、地獄をゲゲゲの鬼太郎に、ヴァティカンをローマ法王に、ベティー・フォード・センターをブリトニー・スピアーズに、鬼が島を桃太郎に…。 というぐらいに、ストライクなキャスティングだったわけです。僕はいつも幸運なオトコなのです!ホントに。
それ以来、僕とアントワープという町(というか村?)とのお付き合いは続いています。主にアントワープ・アカデミーの卒業生の人脈を中心としてはいますが、それ以外にも港の水夫専門服屋さんのオヤジ、町の中心にある作業衣屋さんのオヤジと奥さんと娘と犬、町で最高だったホテルのオーナー一家、レストランのオーナーやホールの方々、そして洋服屋さんや靴屋さんたち…とのフレンドシップ。ベルギー人は、親切でイイ人たちが多いですね。
近年、アントワープを訪れたディストリクトのスタッフたちも、町に着いた瞬間から、その穏やかな空気を感じたそうです。僕はアントワープと、その町の住人たちとの付き合いからたくさんのことを学びましたが、ここで、それを箇条書きにしてみましょう。
1.英語力が強化された:母国語を英語としない人たちとの英語での会話は、‘ヴォキャブラリーや文法力を創意工夫でフォローしつつ、なるべく相手にわかりやすい表現を心がける’という実際的な方法論を身につける結果となりました。
2.言語以外のコミュニケーション能力が強化された:それでも通じないこともあるわけで、その時は身振り手振り、そして‘誠意’しかないですね。真面目に、一生懸命に。
3.コンセプト力が強化された:アカデミーの教育は‘コンセプトの掘り下げ’が中心。それを横から見ていて、教えられることが多かったです。ものづくりの基本は‘なぜ?’が基本。 なぜ、そのカタチなのか?なぜ、その色なのか?なぜ、そもそもファッションなのか?なぜ、生きているのか…という具合に。
4.フットワークが強化された:僕は何しろ歩きます。世界中、町中を。自分の目で見て、触って、感じて、聞いて、味わって、知り合って、会話して…。それが肝心。それが基本です。
5.視野が広がった:もともとなんでも興味を持って、なんでも偏見なく受け入れる生き方をしてきたつもりですが、アントワープのように小さくても、なんでもあり、の町だと、さらに自分の許容範囲が広がります。アントワープは港町なので、サブ・カルチャー、カウンター・カルチャー関連も満載。歴史的な教会の隣がS&Mショップだったり、その向かい側がタトウー屋さんだったり、ワンブロック先には'赤線地帯'が現存しています。ちなみにゲイ&レズビアンの本屋さんも充実。 また、現代美術館では、パリやロンドンやNYでは見られないアーティストの展示が開催されています。その隣には映画やヴィデオ専門の新しい美術館もできました。
どうですか?面白そうでしょ? 僕の場合はたまたまアントワープでしたが、それがバンコクでも、サンクトペテルブルグでも、ウイーンでも、ウブドでも、京都でも、柴又でも、八王子や南大東島でも良いと思います。ココロを開いて、何かに出会い、さらに自分が開かれていくって…最高ですよね!
LIFE IS BEAUTIFUL
そういえば、納期遅れでようやく入荷した靴ブランド、ElsaのデザイナーElsもアントワープ学院出身のデザイナーです。残念ながら彼女は中退組ですが、ハイダー・アッカーマンも同じ経験をしています。でも‘結果良ければ全て良し’ですから^^
今、初台の東京オペラシティーにあるギャラリーで‘6+ アントワープ・ファッション展’が開催中です(6月28日まで)。ぜひ足を運んでみてください!
本文のおわりです。