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District Report | District 通信

TACHIAGARI
コム デ ギャルソン オム プリュス

季節はこれから夏……でも、店頭は早くも秋冬シーズンに向かっています。来るシーズンはグレイとブラックに注目。コム デ ギャルソン オム プリュスのショーで感じたブラックの新鮮さをクリノが語ります。


2019年、秋・冬の立ち上がりについて書いてみましょう。

ファッション小売業においてとても重要な、そしてワクワクするイヴェント&タームが‘立ち上がり’です。
以前も書きましたが‘立ち上がり’は‘Tachiagari’として世界語となりつつあり、その背景にはコム デ ギャルソン(CDG)社があります。CDG社が捉えるシーズンスタートの重要性を同社の取引先や周辺企業も意識するようになった結果、Tachiagariは多くの海外業界関係者が普通に使う用語となりました。もちろんCDG社と全く縁が無い企業やブランドは別ですが、優秀なスタッフが多いCDG社からは多くの卒業生も巣立っているので、このコトバが伝播されていく理由ともなっているようです。

さて、2019秋・冬のディストリクトは‘グレイ’という色を意識したディレクションを立て、品揃えを行っています。馴染みがあって、着るのに抵抗が無く、かつ‘品のある’色。グレイは知性を感じさせる色でもあります。しかも色の幅が広い。グレイに合せる色も多岐にわたり、ブラウンやベージュからユニフォームに見られるネイビーとの組み合わせや赤とのマッチングも新鮮です。

・ジャケット:¥147,000 + tax

・ジャケット:¥146,000 + tax

・プルオーバー:¥59,000 + tax

・パンツ:¥27,000 + tax

・パンツ:¥45,000 + tax

・コート:¥88,000 + tax

そしてブラック。静寂を感じさせるグレイをさらに落ち着かせるだけでなく、グレイ+ブラックはシャープにもエッジ―にもなります。
今秋・冬、久々にブラックは気になる色です。それもクールなだけでないブラック。たとえば80年代のDCブームや90年代のアントワープ派、2000年代のエディ・スリマンに見られるエッジ―なブラック……。ブラックでも多様なニュアンスがありますが、僕は2019年秋以降のブラックにはヒューマニティーや深遠性を感じています。‘格好良いブラック’‘シャープなブラック’だけでなく‘深みのあるブラック’という見え方、捉え方が台頭してくる予感なのです。  

何故でしょう? それはファッションに限らず我々を取り囲む社会状況のフラジャイルな、あるいは不安とも言える要素が、ここに生きる者達に‘もっときちんと考えよう’とか‘筋を通す’‘襟を正して芯を持って生きよう‘というニュアンスを言下に要求しているからではないでしょうか。世界の政治が極端な二極化や自己中心的な発想に突き進み、身近では政治の私物化も進んでいる状況下、社会の一員である‘ひと’がもっとしっかりしていないと世の中はもっと悪くなっていく、といった意識が広がっており、それゆえ着る服に求められる意思表示や自己認識・自覚においても‘もう少し深みのあるニンゲンへ’という見えざる引力が働いている……と感じているのは僕だけでは無いはずです。

・ジャケット:¥85,000 + tax

・シャツ:¥40,000 + tax

・シャツ:¥40,000 + tax

・ジャケット:¥86,000 + tax

・ジャケット:¥99,000 + tax

・ネックレス:¥87,000 + tax

2019年1月18日、パリ。コム デ ギャルソン オム プリュス秋・冬コレクション発表の場にいて僕はそう感じていました。もちろん、これは社会潮流分析をクリエイティヴ・ディレクションの基軸とするクリノ的分析であり、件のコレクションをシンプルに良いコレクションだった、ブラックが強く新鮮に感じられる内容だった、と受け止めるのが正当だと思います。

今回の会場はパリ中心街のスーパー・マーケット跡地。会場に入ると既に生演奏が始まっていました。荒削りでノイズ的な音楽、そして服がよく見えないほど暗い照明。ファースト・ルックと同時に生演奏から編集音源に変わります。肩をいからせ、足早に歩くモデルの姿はまさにThe COMME des GARÇONS。モデルのキャスティングやヘア・メイクにもパンクなニュアンスが感じられます。見方によってはステレオタイプとも言える演出なのですが、その中心にある服の完成度が‘単なる黒いパンクな服’を超え、エレガントで強い服であるために、全て超越したものとしてプレゼンスしていました。
アンフィニッシュ、レイヤリング、アシンメトリー、デコパージュ、グリッター……我々が30年間目撃し続けてきた‘コム デ ギャルソン的なもの’の秀逸なエッセンス全てがそこにはありました。
それはコム デ ギャルソン オム プリュスのというよりは、ウィメンズも含めたコム デ ギャルソンというブランド全てのデザイン・エレメントあるいは思想の集大成とも感じられました(これが2020年にも繋がる主題なのですが……それはまた別の機会に♪)。
ここに見られるフォーマル・ディテール、ニュー・レングス、テイラリング・エッセンス……はディストリクトのクロージングにおける原点や顧客のみなさまの好みに100%合致しています。今までも良かったのですが今回のコレクションは圧巻で別格の完成度と言えます。
そして素直に着たくなる服。ディザイアブルで恰好良い服ばかりです。最近盛り上がってきている‘洋服大好き新世代’の若いお客様やコム デ ギャルソン入門者にも自信を持ってお薦めできます。

50年コレクションを作り、ブランド・メッセージを発信し続けて尚のこの内容には本当に脱帽という言葉しかありません。このコレクションを実現されたデザイナーとそのチームを心から尊敬します。

2019年、立ち上がりにて。クリノ・ヒロフミ

p.s.選挙権のある皆さん、参議院選挙は必ず投票に行ってくださいね!