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第二十九回「やっぱりファッションが好き!」
2008.07.14|Kurino's column
6月初旬から7月頭まで、22日間の長期海外出張に行ってきました。流石に長かった!
出張先はロンドン、ボローニア、フィレンツェ、ミラノ、そしてパリ。
ロンドンではUAが行ってきたRCAファッション学部卒業生へのサポート・プロジェクトの審査と受賞者発表、そして街のリサーチ。ボローニアは素晴らしいお店があるのでリサーチのみ、そしてフィレンツェは恒例のメンズ展示会、ピッティ・ウオモのリサーチと買い付け、ミラノとパリではメンズ・コレクションと展示会、そして買い付けとやはり街のリサーチが業務の中心でした。更に今回はUAショップの販売メンバーの出張同行者アテンド、というお仕事もあって盛りだくさん。
忙しかったですが、やっぱり面白かったですね。

ひょっとすると100回目くらいの海外出張ですが、今回の出張を終えた感想は
‘ファッションの転換期に自分がするべきことは何だろう?’ということ。
皆さんもご存知と思いますが、今、世界的にファッション消費が減退気味です。
実は日本以外の国はこれまでもそれほどファッション消費が盛んではなかったのですが、今、彼ら(海外のファッション業界人)の頼みの綱、元気だった日本までもがこのマイナス・スパイラルに入ってしまい、彼らとしては焦りを禁じ得ない状態、ということなのです。

もともとヨーロッパやアメリカのファッション消費というのは富裕層や業界人、そしてファッション・ヴィクティムと呼ばれる層が中心となっており、日本のように一般の若者がファッションをライフ・スタイルの中に取り込んでいたり、趣味のひとつとしてファッションが存在していたりする、ということ自体が珍しい状態です。特に男性の場合。
70年代中盤以降のファッション情報の普及(ポパイ等の雑誌の興隆)や、ヴァラエティー豊かなショップ群の誕生(所謂セレクト・ショップ)、そして学生がアルバイトをして、得た収入を自分の好きに使える状況(若者の可処分所得のありかた)…それらが日本のファッション消費を支えてきました。あとは、日本の場合、クラス社会ではない、という背景も大きい。ヨーロッパの場合は特に、生まれた家柄や階級、職業がそのひとの着るものを規定していくことが当たり前なのです。
日本のようにハンド・メイドのスーツを着ているひとが翌日はパンク・スタイルやデザイナー・ブランドを楽しんでいる、というスタイルは彼らには理解も想像もできないことでした。こうしてクラスレスであることも日本のファッションを支えてきました。
つまり日本とは‘ファッションの民主化’が進んだ、’ファッション先進国’なのです。
街を歩けば、若者たちが実にヴァラエティー豊かに自分のスタイルを楽しんでいます。
来日する海外デザイナーや業界人たちがその光景に驚き、多くの場合、ヒントをつかんで帰っていくのも事実です。コレクションやその営業、出荷が終了し、わずかにフリータイムができる4,5月、そして11,12月に海外業界人の来日が集中するのは‘ネタ探し’の為。日本(トウキョウ)はそういう意味で世界のファッションの中心地とも言えます。
ディストリクトのあるキャット・ストリートは近年特に人気で、僕も知っているあのブランドや、あのデザイナーたちを店頭で見かけることもしばしばです。
直近の傾向だとディストリクトのオリジナルや、僕が別注をお願いしているヒピハパ等の商品、それらをサンプルとして購入していかれる業界人の多いこと、多いこと…
実際に某ブランドで、ディストリクトのオリジナルそっくりのジャケットを発見してびっくり、ということもありました。
驚くと同時に、少し、嬉しくもあり、そしてビミョーな感じ。
ここまで述べてきたのはトウキョウ(日本)のファッションが進んできた、ということです。
で、その日本のファッション消費に元気がない理由は?
ひとつにはサブプライム・ショック等に関連する世界的な景気減退、景気の先行き不透明感、諸物価の値上がり、税や保険料の影響…つまり’景気‘という外的要因があります。
ところで、ファッションとは景気が良いから買う、ものでしょうか?
お金が余っているから買う、ものでしょうか?
そういう理由もあるでしょう。
そういうチャンスが増えたからファッション消費のマーケットが大きくなったのかもしれません。マーケットとはそうして大きくなっていくものです。民主化、ですよね。
ところでユナイテッドアローズやそこで扱っている商品、ディストリクトやそこで扱っている商品の持つマーケットとはそういう種類のものなのでしょうか?
たぶん少し違います。
ファッション・ビジネスとは数字の拡大を目指すだけのものではないと思います。
ファッション・ビジネスとは洋服を着ることの楽しさ、それを通じて自分を知ることの面白さを伝える仕事だと思います。
UAが、そして僕自身が目指してきたのはその楽しさを伝えることです。
今、日本のファッションに元気がないのは、その、本来はファッションに求められていた
’美しさや楽しさや快適さ‘を提供できていない、提供するチカラが衰えているから、だと思います。’民主化’だけが進んで中身が薄くなっているのかもしれません。
だったら、もっと面白くしなければいけないと思います。
もっとファッションの中身を濃くしていきたいと思います。

長い旅の終わりに思ったのは‘僕はやっぱりファッションが好き、ファッション小売業が好き’ということでした。
様々な展示会を見、コレクションを見、買い付けを行い、多くの人に会い、いろいろなお話をしました。
素晴らしいお店を見て、勇気付けられたり、自分たちが忘れかけていたことについて、考えさせられたりもしました。
でも、いつもそこにあるのは
‘それでもヒトがいる限り、ファッションは存在し、ヒトがいる限り、ファッションは面白い’ということ。
オシャレはヒトを表す表現手段、ヒトにしか出来ないクリエイション活動の一つです。
世界中でファッションのパワーが一時的に減退しつつある、ということは、逆に言えば、
今、我々がそこで‘何か違うこと、何か面白いこと’が提供できたら、もっとお客様に喜んでもらえる、ということだと思います。

具体的に何か面白いことがありますかって?あります。
例えばUAではフリー・ショルダー・モデル(Free Shoulder Model)という軽い着心地の新しいクロージング類を開発し、着る人の肩やカラダの負担を軽減していきます。
或いはディストリクトでは秋・冬の白(White)という色に注目して、白いレザーブルゾンや白いウールパンツを提案していきます。
今、若い人たちが以前ほどファッションに興味や関心が無くなっているそうです。
ファッションよりも大切なものに気がついたり、プライオリティーのありかたが変わってきているそうです。
それがファッション消費のパワーダウンのもう一つの背景です。
でも、それは、自分がある、ということ、自分のありかたがたいせつ、ということ、ではないでしょうか?
本質的なことに気がついた、ということ。
僕はこの事態をポジティヴに受け止めています。
そもそも僕自身がファッションよりも大切なことや面白いことを沢山持っています。
だからこそ、ファッションが面白いのですから!
7月9日から店頭に販売のお手伝いとしても復帰しました。
このファッションの楽しさをお伝えするためです。
さて、この秋・冬は何を買おうかな…
- 第三十四回『ステキなひとたち、と、ものたち』 [2010.03.21]
- 理力コラムVOL.25;「STAR WARSとの出会い」 [2009.12.13]
- 「六感」第七回 [2009.10.04]
- 第三十三回「5都市から見えるもの」 [2009.07.26]
- 理力コラム VOL.24 ; 「ブラッド・ワーク(わが心臓の痛み)」 [2009.07.04]
- 「六感」第六回 [2009.06.01]
- 第三十二回「ファッションはカルチャーか?」 [2009.05.03]
- 理力コラム VOL.23 ; 「記憶を消します...『エターナル・サンシャイン』」 [2009.03.20]
- 「六感」第五回 [2009.02.09]
- 第三十一回 「Yes,we can. I believe」 [2008.12.15]
- 2010.03 (1)
- 2009.12 (1)
- 2009.10 (1)
- 2009.07 (2)
- 2009.06 (1)
- 2009.05 (1)
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- 2008.12 (1)
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