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'ネイビー・ブレザー考:ユニフォームと男子。そしてエディ・スリマンと高橋盾'

posted by クリノ

先月、サイの展示会帰りにディストリクトに立ち寄りました。

今春・夏は特に色の綺麗なもの、素材が軽いもの、着心地も柔らかいものが目につきます。そんな中、既に動き始めている新商品が気になります。売り場スタッフの声から企画のプロフェッサーS氏が完成させた新型ネイビー・ブレザーを着てみました。こちらも軽く、しかも英国素材特有の'ハリ感'もあって実に着心地が良い一品。当日、僕はScye/Districtの別注ネイビー・ブレザー(ダブル・ブレスト)を着ていましたが、更に2ボタン・シングルのディストリクト・ブレザーに手が伸びたのです。

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【District】

■William Halstead HALF CANVAS BLAZER

1122-259-5732

Size:44,46,48,50,52

Price 81,400JPY(TAX IN)

※残り僅かのサイズも多い為、気になる方はお早めにお問合せ下さい

因みに僕のクローゼットには所謂ネイビー・ブレザーやネイビー・ジャケットと言われるアイテムが'豊富'です。カルーゾー、キートン、ドリス・ヴァン・ノッテン、ジュンヤ・ワタナベ、コムデギャルソン・オムプリュス、エンジニアード・ガーメンツ、ラフ・シモンズ、マーガレット・ハウエル、コーディングス、サイ、そしてディストリクトetc...同色ボタンのものからメタル・ボタンまでヴァリエーションがあって、というかあり過ぎ、ですが。

それでも今季ネイビー・ブレザーが気になる。これは一体どういう意味を持つのか?

勿論、暫く着ない時期もあったりします。それでも年に着る回数が皆無ということは無いでしょう。特に今春はヘヴィー・ローテーションの予感がします。

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'男子は何故ネイビー・ブレザーが好きなのか?'

あらためて、そんなことを考えていてエディ・スリマンのセリーヌのコレクションを想いました。そう言えばエディも昨年は金ボタンのネイビー・ブレザーを押していました。

エディとの付き合いは1998年のイヴ・サンローラン・リヴ・ゴーシュ・オムからになりますが、その後ディオールに入り、メンズを立ち上げた時もきっちりとしたジャケットやスーツ、トレンチ・コート等のクラシック・テーラリング定番アイテムを多く提案していました。エディがサンローランに戻ってディオールは彼のアシスタントだったクリス・ヴァン・アッシュが引き継ぎましたが、クリスの起用も彼が綺麗なクロージングが得意だったからでしょう。00年代のラグジュアリーブランド特にメンズは'ストリート・スタイル'ではなくクロージングが主役だったことを想い出します。

そこで僕はエディの直近の仕事を知りたくてセリーヌ・オムの最新(2021/22 秋・冬)のヴィデオを観ました。画像を観ていてブランドのクリエイティブ・ディレクターであるエディ・スリマンのキャリアを回想し、エディが捉えている'男子像'について考えました。

今回(2021/22 A&W)のテーマは'ティーン・ナイト・ポエム(Teen Knight Poem)'で16世紀に建てられたシャンボール城がショウの舞台です。シャンボール城は、古典的なイタリアの構造に伝統的なフランス中世の様式を取り入れたフレンチ・ルネサンス様式(北方ルネサンス様式)が特徴の城。世界遺産の城をプレゼンテーションの場に使用する交渉の難易度が伺われます。音楽はTHESE NEW PURITANSのジョージ&ジャック・バーネット兄弟の別ユニットである「THE LOOM」からの提供とインフォームされています。甲冑、マント、ブランデンブルク、ブーツ、スタッドそして馬と旗。まさにKnigt(騎士)の世界です。何気なく画像を観て、最初はその大袈裟さに苦笑気味でしたが、だんだんとエディが表現したかった世界が見えて来て、そこにドラム(?)中心の音楽とナレーションが重なり、いつしか僕は感動していました。クリエイティブ・ディレクター(CD)という仕事の本質を、そして完成度の高い例をみた、と思ったのです。

ラグジュアリーブランドに要求されるファンタジーの創出はCDの最重要な役目です。一般常識からは考えられない様な価格の商品を買って頂く為の'夢'の創造ということ。

新型コロナウィルス感染症起因のパンデミック以降、世界の価値観は大きく変化し、ファッションの価値や美学も従来のままでは存続しにくい状況となっています。この'ファンタジーが成立しにくい時代'のファッションとは如何にあるべきか?多くのラグジュアリーブランドがリアリティーとの整合性という疑問を突き付けられるなか、エディ・スリマンは積極的現実逃避とも言える'時代を飛び越える'挑戦を試みたのかも知れません。

そして、それは成功しました。

16世紀の古城、若い騎士達が旗を掲げて馬を駆る...よくできた漫画の世界のごとく。

ファンタジーとは中途半端では陳腐なだけ。突き抜けること、ブッチ切ることでファンタジーを成立させる。それがラグジュアリーブランドのCDに求められている役目なのだ、ということを確認させる仕事でした。長年、複数の老舗メゾンと仕事をしてきたエディ・スリマンの面目躍如です。お城というシチュエーション、美形の若いモデル、美しい馬、旗とそこに書かれたセリーヌのロゴ。そして鎧兜とコネクトさせた服。実はタートルネックや求心編みは鎖帷子とは遠い親戚です。また、マスクが常態化した生活において'兜'的なアイテムにもリアリティーがあります。それをビジューで飾ってラグジュアリーなアイテムに仕上げています。タータンチェックやキルトスカートも登場し、騎士道の本家である英国の香りもしました。2004年、秋・冬の圧倒的だったディオール・オムのフィナーレを想いだしましたが、あれも最高のシーズンでした。

また、連想したのがパリ・ファッション・ウィークにメンズとして再登場した2019 春・夏シーズンのアンダーカバーとの相似です。アンダーカバーもまた'旗'がシンボリックに使われていました。しかし高橋盾が表現していたのはトライブ化したユース・カルチャー。実に高橋盾らしいサブ・カルチャーの採用と深度、そして、そこから構築される複数のファンタジー。ファッション・デザイナーとクリエイティブ・ディレクターの役割の相似と相違を感じる二つの例だと思いました。更なる偶然としては2020、秋・冬のアンダーカバーが黒澤明の映画'蜘蛛の巣城'をヒントに鎧や鎖帷子から着想した現代の服を具現化していたこと。セリーヌ・オムの'Teenage Night Poem'でも中世の鎧や鎖帷子にリファレンスしたアイテムが満載です。本稿に於いて、別にクリノは2者の相似

や影響について批判的に述べるつもりはありません。むしろ、別の国、人種、個人である両者が歴史的な題材にリファレンスしたこと、それが鎧兜や旗までも"ファッション化"したアイデアと具現化の力量、また、結果としての'ブランド・ファンタジー'や'ブランディング'の効果、に興味を持ったのです。エディの'10代の騎士'ではアップになったモデルが落涙する場面が有ります。僕はその演出によって本コレクションの虚構性が完結した、とも解釈しています。

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話がそれてしまいました。エディのセリーヌ(2021/22 A&W)のイメージを見て、クリノは'男子好み'と鎧兜やユニフォーム的なモノとの繋がり、ルーツを再確認するに至った、という訳です。男子はストイックなユニフォーム的なモノが好き、そしてヒロイズムの香りも好き。それがネイビー・ブレザーへの想いに繋がるのかも知れません。また新型コロナウィルス感染症は従来型のランウェイ・ショウの実施の困難さも突き付けましたが、エディの仕事は'ヴィデオだから可能なショウ'でもあります。しかもロケ地は本物...。

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エディ・スリマンと高橋盾、ほぼ同年代の2人の偉大なファッション・クリエイターの充実した仕事ぶりや'結果を出す'力量を痛感したクリノでした。ディストリクト・オリジナル・ブレザー。是非、実物をご覧いただきたいと思います。

2021年、早春、栗野宏文。

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